京都デニム|日本の伝統色:支子色(くちなしいろ)

みみなしの山のくちなしえてしかなおもひの色の下ぞめにせん
詠人知らず(古今和歌集)
朝晩はまだ冷える日もありますが、だんだんと暖かくなり
一年で一番過ごしやすい時期がやってきました。
梅雨に入るまでの短い期間ではありますが、特に野外での時間を楽しみたいものですね。
今月は春の沈丁花、秋の金木犀に並ぶ強い芳香をもつ
梔子(クチナシ)についてご紹介します。
梔子は遠くからでも嗅ぎ分けられるその香りと、
長期間咲き続ける大きな肉厚の花から天国に咲くといわれ、
邪悪なものを追い払うとして古来より親しまれてきました。
実には多くの効能があり、山梔子(サンシシ)という漢方薬として広く知られています。
解熱・消炎・鎮静・降圧・利胆・止血などの作用があるとされています。
また染料としても古くから用いられ、布だけでなく
栗や芋のきんとんやたくあんの色づけに使われます。
梔子は黄色の代表的な天然染料ですが、
他にも黄色を染めるための染料は数多くあり、
刈安(かりやす)・黄蘗(きはだ)・楊梅(やまもも)
鬱金(うこん)・蓬(よもぎ)などが
現在でも手に入れやすく、昔ながらの染めを楽しめます。
冒頭の和歌にも「下ぞめ」という言葉が出てきますが、
天然染料は一度で濃い色を染めるのが難しいので、
最初に地の色を染めてから更に濃い色を染めて、望む色を作り出す方法のことです。
この歌では「思いの色」と「緋の色」がかけられていて、紅を染めるための下染めとして
梔子が使われていたことを表しています。
一重咲きのものには実がなりますが、八重咲きのものにはなりません。
実の口が開かないことから「口無し」という名がついたといわれています。
 
洋名では「ガーデニア」という名で、香水にもよく使われていますが、
植木や街路樹としてみかける方も多いと思います。
梔子の良い香りをまとって、今日の一日を豊かに過ごしてくださいね。