京都デニム|日本の伝統色 菫色

山吹の咲きたる野辺(のへ)のつほすみれこの春の雨に盛りなりけり 万葉集 高田女王(山吹の咲いている野の菫がこの春の雨の中沢山咲いていますね)
春の訪れはあっという間にやってきて、もう桜の見ごろが過ぎようとしています。
今月は春の足元を彩るお花、菫についてご紹介します。

菫は世界各地に約400種もあるといわれ、日本でも北から南の各地で見ることができます。
花弁は五枚で左右対称、地面の近くにひっそりと咲く姿は控えめな少女に例えられることも多いですね。
菫の花の時期は3月から5月と長いのですが、
花が咲いている時期はもちろん秋頃まで次々とつぼみができて
種を実らせている姿が見受けられます。
花が咲かないのに種ができるなんて、不思議だと思いませんか。
この様な特徴を持つ花を「閉鎖花」と呼び、
花の中で自身の雄しべの花粉を雌しべにつける自家受粉を行っているのです。
他にも種子をアリに運ばせるためにアリの好物を付属させたりと、なかなかしたたかなお花なのです。
子孫繁栄のための努力が実を結び、現在のように多くの種属が生まれたのでしょう。

菫の品種で今最もよく見かけるのは「パンジー」ではないでしょうか。
パンジーは園芸用に品種改良されたもので、少し小さめの「ビオラ」も人気です。
日本原産のものでは、「ミヤマスミレ」などが自生していますが、
西洋で菫といえば「ニオイスミレ」が真っ先に挙げられます。
ニオイスミレはヨーロッパではかなり古くから香水の原料として使われてきました。
シェイクスピアの「真夏の夜の夢」では恋の媚薬として、
ローマではニオイスミレを漬け込んだバイオレットワインが
作られていたなど、用途も様々なようです。
また、「エディブルフラワー」(食用花)としてもスミレは人気で、
砂糖漬けやサラダ、スイーツの彩りとして登場します。
日本人の私たちにはまだなじみが薄いですが、
野菜やハーブと同じとのことです。
日本でいうと菜の花や紫蘇、桜などを食す感覚でしょうか。
何気なく見ているだけでは気付かない個性があるお花なので、
まさしく日本の美意識と一致しているといえるでしょう。
それでいてしたたかで地面にしっかりと根を下ろす・・・
日本人に昔から求められていた要素が詰まっているのですね。
今年もやってきた春の喜びを、菫とともに味わっていただけたらと思います。